猫は亡くなるとすぐ死後硬直が始まるため、亡くなった後は速やかに姿勢を整えなければいけません。
硬直が進行すると、手足を動かしたり、愛猫を自然な体勢に整えたりすることが難しくなるため、できるだけ早く体を整えてあげることが重要です。
この記事では、猫の死後硬直とはどういうものなのか、そして、猫の死後硬直が始まる前に飼い主様がするべきことについて解説します。
この記事の監修者
高間 健太郎
(獣医師)
大阪府立大学農学部獣医学科を卒業後、動物病院に勤務。診察の際は「自分が飼っている動物ならどうするか」を基準に、飼い主と動物の気持ちに寄り添って判断するのがモットー。経験と知識に基づいた情報を発信し、ペットに関するお困り事の解消を目指します。
猫が亡くなったのか確認する方法は?体温や呼吸などを確認
死後硬直をご説明する前に、猫が本当に「亡くなった」のか「仮死状態」なのかをきちんと見分けましょう。
体が動かない、呼びかけに反応しない場合であっても、体温・呼吸・脈拍など生命活動が続いている場合は仮死状態です。
極度に弱った猫の呼吸・脈拍は数分間でわずかな回数しかない場合もあるので、落ち着いて判断してください。
生命活動を確認できた場合は、まずは落ち着いて動物病院に連絡するなど、蘇生できないか探ってみましょう。
もし生命活動が確認できない場合は、猫の瞳にある瞳孔(黒い部分)を確認します。
猫の目は明るい場所ではIの字型に細くなるため、明るい場所でも瞳孔に変化がない場合は亡くなっていると考えられます。
瞳にライトを当てて瞳孔の動きを確認する方法もありますが、仮死状態の場合は目を負傷する恐れがあるため、生命活動が止まった後の最終確認として行うようにしましょう。
猫が亡くなると死後硬直が2~3時間程度で始まる
動物は亡くなって数時間後には全身の筋肉が硬直する死後硬直が起こります。
猫は死後2~3時間程度、短ければ1時間ほどで死後硬直が始まります。
死後硬直は手足、腹部、頭部など段階を踏んで全身に広がっていき、やがて全身が硬くなって動かなくなります。
その後、死後硬直が始まって24時間程度が経過すると、猫の体は再び柔らかさを取り戻します。この現象を「解硬」と言い、その現象が起こった後は遺体は少しずつ腐敗して分解されていきます。
猫の遺体を安置できる日数は長くても夏場で2日、冬場なら3日程度とされています。
遺体の腐敗を少しでも遅くするためには、保冷剤やドライアイス、氷を使用します。
遺体に水分がつくと腐敗が進む可能性があるため、布や新聞紙などを巻いておきましょう。
死後硬直が始まって解硬が起こり、遺体が傷み始める時間までに、葬儀の準備を済ませなければいけません。
猫の死後硬直が始まる前に姿勢や体をきれいにしておく
猫は死後1~3時間程度で死後硬直が始まります。
亡くなった直後は強い精神的ショックを受けているかもしれませんが、死後硬直の前に姿勢や毛並みを整えてあげましょう。
猫の死後硬直が始まる前に棺に入るよう姿勢を整える
愛猫が死亡したら、死後硬直が始まる前に姿勢を整えてあげてください。
手足が伸びたまま硬直してしまうと苦しそうな姿勢に見えるうえ、棺にうまく収まりません。
死後硬直が始まる前に、手でまぶたをしばらく抑えて閉じてあげましょう。
筆者の愛猫が亡くなったときは伸びていた手足を体側に寄せて、丸くなって眠っているような姿勢に整えてあげました。
たくさんの花に囲まれ、タオルで包まれて穏やかに目を閉じている姿を見ると、悲しい気持ちが和らいだのを覚えています。
きちんと姿勢を整えて棺に納めてあげながら、旅立つ愛猫が安らかに眠れるように祈りましょう。
最後のお世話をすれば、飼い主様の気持ちの整理にもつながります。
遺体をブラッシングしたり、棺に大好きだった物を入れる
遺体を棺に納める際にはブラッシングをしたり汚れた部分を拭くなど、できる限り体をきれいにしてあげましょう。
死後硬直は時間が経てば解けて、再び体が柔らかくなります。
その際には肛門から体液が漏れ出る場合があります。あらかじめ肛門に脱脂綿を詰めて遺体を汚さないようにしてあげましょう。
汚れても交換できるように、棺にはペットシーツなどを敷いておくのもおすすめです。
遺体をきれいにした後は周りにはお花を沿え、生前に好きだったおやつやペットフード、おもちゃなどを置いてあげましょう。
「今までありがとう」「きれいになったね」などの言葉をかけてあげながら、最後の触れ合いとお世話の時間を過ごしましょう。
「猫は死後硬直後に生き返る」説は嘘。死後硬直は本当のお別れ
「猫は死後硬直後に生き返る」という説があるようですが、残念ですがこれは事実ではありません。
愛猫が特別で可愛い存在だからこそ、帰ってくる兆しを探したくなる気持ちは理解できます。しかし、死後硬直は猫が亡くなった何よりの証拠です。
愛猫がこの世を去ってしまうのは、人生の幸せと豊かな部分を一度に失う辛い出来事です。
この悲しみを乗り越えるために、多くの愛猫家が心の安らぎや救いを求め、その結果として「生き返る」という説が生まれたのかもしれません。
愛猫との思い出を大切にし、与えてくれた幸せな時間を心に留めておくことが、悲しみを癒す一歩となるでしょう。
猫の死後にしてあげられることは?亡くなった後にする準備
これまでたくさんの癒しを与えてくれた猫が安らかな気持ちで旅立てるよう、心を込めてお見送りをしてあげましょう。
愛猫の形見を残す
猫が旅立った後でも、形見を持っていれば思い出がそばに寄り添ってくれます。
形見にしたい物があれば猫に少しだけ協力してもらいましょう。
一般的なのが、足形(肉球)を取ったり、ヒゲや毛を残しておくのが人気です。
肉球にインクをつけて色紙や紙に押すことで、愛らしい肉球の形を残すことができます。これに写真や寄せ書きを添えると、より一層思い出深い形見となるでしょう。
また、残した毛は「遺毛」と呼ばれます。生前にカットして残しておけば、ぬいぐるみや筆などのメモリアルアイテムに加工してもらえる場合もあります。
火葬方法を慎重に選ぶ
愛猫を納得できる形で見送るためには、火葬の方法を慎重に選ぶことが重要です。自治体に遺体の引き取りや火葬を依頼すると、廃棄物として扱われる場合があり、立ち会いもできないため、最後まで愛猫を見送ることができません。
民間の火葬業者を利用することで、愛猫とのお別れをより大切にすることができます。火葬の種類には、以下のような選択肢があります。
- 合同火葬: 他のペットと一緒に火葬される方法で、費用を抑えることができますが、遺骨は返却されません。
- 個別火葬: 愛猫だけを火葬する方法で、遺骨を返却してもらえます。立ち会いが可能な「立会個別火葬」と、立ち会わずに業者に一任する「一任個別火葬」があります。
- 訪問火葬: 自宅まで火葬車が来て、愛猫を火葬する方法です。自宅での最後のお別れが可能で、飼い主の負担を軽減できます。
火葬業者は、火葬後の拾骨や専門スタッフによるアドバイスなど、手厚いサポートがあります。愛猫との思い出を大切にし、心を込めたお見送りを実現するために、信頼できる業者を選ぶことが大切です。
火葬後に手元に戻る遺骨の供養をどうするか決めておく
火葬後に返ってきた遺骨は霊園に埋葬したり、骨壺に入れて自宅で供養します。
近年は手元供養や、散骨も注目を集めています。
手元供養とはお骨を家の中の仏壇に飾ったり、キーホルダーなどに遺骨を納めて持ち歩いて供養する方法です。
必ず仏壇を用意する必要はありません。亡くなった猫を思い出してあげるのが一番大切です。
お花やおやつなどをお供えして、ときどき手を合わせてあげましょう。
山の名や海辺をお散歩するのが大好きだった場合は、海や山などへ粉状にした遺骨を撒く海洋散骨も利用されています。
お住まいの近くに海や山があっても、勝手に散骨してはいけません。
自然散骨をする場合は地域のガイドラインや指針を確認し、問題がないか事前に確認しましょう。
亡くなった事実を受け入れられない場合は体と心を休める
唯一無二の存在を失った心の痛みは、すぐには癒えないものです。
ペットを失った悲しみや苦しみが続く「ペットロス」になった場合は、ゆっくり体と心を休ませましょう。
ペットロスを克服しなければ、うつ病に移行してしまう恐れがあります。
別れの辛さを乗り越えるまでにかかる時間と方法は人それぞれです。
やらなければいけない作業があるかもしれませんが、ここはご自身とご家族の気持ちを第一に考えて、まずは悲しみを乗り越えられるように気持ちを整理しましょう。
どうしても辛い気持ちが続く場合は、こちらのコラムを参考に、少しの間体と心を休める方法を探してください。
まとめ
猫の死後硬直は短い場合で1時間、長くても3時間程度で始まります。全身が硬直してしまう前に、楽な姿勢に整えてあげてから棺に納めてあげるましょう。
その際には体液が漏れてこないように肛門に脱脂綿を詰めたり、万が一の際には取り換えられるように棺の中にペットシ―ツを敷くのも忘れないようにしてください。
しかし、生活に寄り添ってくれた可愛いパートナーが亡くなった事実をすぐに受け入れるのは難しいかもしれません。悲しみやショックを感じるのは自然なことですので、少しずつ前に進めるように、まずはゆっくりと体と心を休めることも大切です。
当サイト「ペット火葬 ハピネス」では、愛猫との最後のお別れを大切にするために、自宅まで訪問して火葬を行うことができます。
飼い主様が後悔のないお見送りができるよう、心を込めた供養をお手伝いし、愛猫との思い出を大切にするサポートをいたします。どんなことでもお気軽にご相談ください。