愛犬と過ごすかけがえのない日々も、残念ながら永遠に続くわけではありません。
そのことをわかってはいても、気づかないふりをしている飼い主様も多いのではないでしょうか。
しかし、愛犬との今をもっと大切にするためにも、目を背けるのではなく「未来への備えをしておく」ことがとても重要なのです。
具体的に、愛犬との将来のために飼い主様にしておいていただきたいことは、次の3つです。
①愛犬を看取る場所を決める
自宅で看取る/病院で看取る
②いざという時にどう対応するか決める
延命治療/緩和ケア/自然に任せる
③火葬・供養方法を決める
【火葬方法】自治体/訪問火葬業者/ペット霊園
【供養方法】手元供養/自宅で埋葬/ペット霊園への埋葬
終末期に備えることは、愛犬との今をもっと充実させることやシニア期に快適な生活環境を整えることにもつながります。
そして、最期の時には、愛犬が安らかに旅立てるように、今から少しずつ準備を始めましょう。
本記事では、愛犬の最期に後悔を残さないために決めておく3つのこと、亡くなる前の兆候、最期の過ごし方、そしてその後の手続きまでを、わかりやすく丁寧にお伝えします。
「愛犬との日々を後悔したくない」という想いをお持ちの飼い主様は、ぜひ最後までご覧ください。
看取りの心構えをしておくことが後悔のない別れにつながる

愛犬とはいつまでも一緒にいたいものですが、どれだけ願ってもそれは叶いません。
ほとんどの場合で、ペットちゃんは飼い主様よりも先に天国へ旅立ってしまいます。
最期の別れのことを考えただけで憂鬱になるという方もおられるでしょうし、実際にその時を迎えるとペットロスに陥る方も少なくありません。
ペットちゃんを見送った後に後悔しないように、またペットロスを軽減するためにも、ペットちゃんとの今を大切に過ごし、終末期や看取りについて考え、心構えをしておくことが大切です。
ペットちゃんと十分な時間を過ごせた人は後悔が少ない
愛犬・愛猫をなくした経験があり、現在はペットと暮らしていない1,000名の人を対象に、アイペット損害保険株式会社が実施した「ペットロスに関する調査」によると、ペットちゃんに対して「後悔していることがある(57.9%)」「後悔していることはない(42.1%)」という結果でした。

*引用:ペットロスに関する調査~ペットを亡くした方の約6割が「ペットロス」を経験~(アイペット損害保険株式会社:2023年)
後悔している理由を見ると「もっと何かできたのではという漠然とした思い」「一緒の時間の過ごし方」「最期の時間の過ごし方」などが多く、ペットちゃんとの向き合い方が不十分だったと感じているようです。

(亡くなったペットに対して、後悔したこと/後悔していることはあると回答した方n=579)
*引用:ペットロスに関する調査~ペットを亡くした方の約6割が「ペットロス」を経験~(アイペット損害保険株式会社:2023年)
対して、後悔がないと回答した人の理由は「十分に一緒の時間を過ごすことができたため」が最も多く、他にも、「家族みんな、あるいは自分が最期を看取ることができた」「よく検討して、満足のいく供養・葬儀ができた」という回答で、ペットちゃんとの過ごし方や看取り方、死後の対応について満足している様子がうかがえます。

*引用:ペットロスに関する調査~ペットを亡くした方の約6割が「ペットロス」を経験~(アイペット損害保険株式会社:2023年)
日頃からペットちゃんとしっかりと向き合い、いつかの時のために備えておく、また終末期や看取りの際には自分にできることをやり切ることが後悔のない別れにつながるようです。
愛犬がシニア期に入ったら看取りのことを考えておこう
栄養バランスの良いペットフードの開発やペット医療の進歩などにより、犬の寿命が伸びているとはいえ、それでもその一生は人よりもずっと短いものです。
犬種や個体差はありますが、一般的に小型犬や中型犬は生後7年ほど、大型犬は生後5~6年ほどでシニア期を迎えます。
シニア期に入ると体の不調が出てきたり、病気になったりする可能性も高くなります。
愛犬に快適で健康的なシニアライフを送ってもらうためにも、飼育環境や給餌内容の見直しを行うと同時に、看取りや供養のことも考え始めて情報を集めるのがおすすめです。
深刻な病気が発覚した場合などはもちろんですが、今愛犬が元気いっぱいに過ごしていても、シニア期に入った頃から終末期に備えておくことが大切なのです。
生後年数 | 小型・中型犬 | 大型犬 |
1年 | 15歳 | 12歳 |
2年 | 24歳 | 19歳 |
3年 | 28歳 | 26歳 |
5年 | 36歳 | 40歳 |
7年 | 44歳 | 54歳 |
9年 | 52歳 | 68歳 |
10年 | 56歳 | 75歳 |
12年 | 64歳 | 89歳 |
15年 | 76歳 | 110歳 |
20年 | 96歳 |
*環境省「飼い主のためのペットフード・ガイドライン~犬・猫の健康を守るために~」を基に作成
引用:飼い主のためのペットフード・ガイドライン~犬・猫の健康を守るために~(環境省)


*環境省「飼い主のためのペットフード・ガイドライン~犬・猫の健康を守るために~」を基に作成
引用:飼い主のためのペットフード・ガイドライン~犬・猫の健康を守るために~(環境省)
看取りの準備でしておく3つのこと|幸せな終末期のために

愛犬が終末期を穏やかに快適に過ごしてもらえるように、そして、その時が来ても慌てずに最善の対応をしてあげられるように、準備しておくべきことをご紹介します。
看取る場所を決める|自宅か病院か
まずは、愛犬を看取る場所について考えましょう。
例えば、ペットちゃんに持病がある場合、「最期まで諦めずに積極的な治療をしたい」あるいは「緩和ケアで痛みを和らげて安らかに旅立たせたい」という飼い主様なら病院での看取りを選択されるでしょう。
治療は愛犬の負担になると考えて「落ち着ける場所で最期を迎えてもらおう」という飼い主様なら自宅での看取りを選択されるかもしれません。
これは飼い主様の考え方によって選択肢が変わることであり、何が正しいというものではありません。
しかし、その時までにどうするかを決めていなかった場合、慌てて選択を誤り、後々後悔することも考えられます。
落ち着いて考えられるときに、家族みんなで話し合っておくのが賢明です。
・家族がそばに居られる
・ペットちゃんはいつもの場所で安心できる
・ペットちゃんに痛みや苦しみがあってもできる処置は限られる
・獣医師が容体に合わせて対応してくれるため、痛みや苦しみを極力抑えてあげられる
・飼い主様が看取りに立ち会えないことがある(駆けつけても間に合わない、休院日や夜間など)
いざというときの対応は?|延命治療・緩和ケア・自然に任せる
いよいよペットちゃんとのお別れが迫ってきたとき、どのように対応してあげるのかも考えておきたいことです。
具体的には「死期を延ばす延命治療をする」「痛みや苦しみを和らげる緩和ケアを受ける」「自然に任せ見守る」の3つがあります。
回復の見込みはないが、死期を少しでも延ばすことが目的
「家族が揃うまでなんとか生きていてほしい」「少しでも長く一緒にいたい」という飼い主様向け
※「無理をさせているのでは」と罪悪感を感じる人もいる
穏やかに死を迎えられるように、痛みや苦しみをできるだけ感じないようにすることが目的。
「苦しませたくない」という飼い主様向け
※病院での緩和ケアの他に、自宅へ獣医師が訪問して行う在宅緩和ケアもある
慣れ親しんだ場所で安心して旅立てるようにすることが目的
とくに医療的な処置はせず、自然に任せる
「家で自分(家族みんな)で看取ってあげたい」という飼い主様向け
※ペットちゃんの苦しそうな姿を見ることになるケースもある
葬儀方法や供養方法を決めておく
いざ、ペットちゃんとの最期の時を迎えると、飼い主様は悲しみや動揺から、物事の冷静な判断が難しくなるでしょう。
筆者も今までに数匹の愛犬を見送ってきましたが、どんなに心構えや準備をしていても、やはりその時を迎えると頭が真っ白になってしまいます。
動揺してしまうのは仕方のないことですが、そんな中でも適切に対応できるように、葬儀方法や供養方法を事前に決めておくか、ある程度候補を絞っておきましょう。
●ペット火葬ができるのは自治体、訪問火葬業者、ペット霊園の3つ
ペットちゃんの火葬は、自治体、訪問火葬業者、ペット霊園でお願いすることができます。
費用面で1番安く済むのは自治体に任せる方法です。
しかし、遺骨が返骨できなかったり、ゴミと一緒に埋め立てられたりなど、望むような供養ができないこともありますの注意してください。
利便性が高く、自由にお見送りの場所が選べるのは訪問火葬業者です。
自宅まで来てくれるので愛犬の遺体を運搬しなくてもいいですし、外出が難しいご家族やペット仲間にも列席してもらえます。
愛犬との思い出の場所で葬儀するなど自由度もく、近年では最も選ばれている方法です。
火葬から埋葬までを一貫して行いたい飼い主様におすすめなのはペット霊園です。
超大型犬にも対応可能な火葬炉を備えているところもあるため、セントバーナードやボルゾイなどの飼い主様にはとくにおすすめです。
以下にて、自治体、訪問火葬業者、ペット霊園のメリット・デメリットをわかりやすく一覧表にしていますので、火葬方法選びにお役立てください。
自治体 | 訪問火葬業者 | ペット霊園 | |
こんな人におすすめ | 形式にこだわらない、費用を安く抑えたいという飼い主様 | 自宅や好きな場所で見送りたいという飼い主様 | 火葬から埋葬までを一貫して任せたいという飼い主様 |
メリット | ・費用が安い | ・火葬の日時を自由に決められる ・自分の手で拾骨ができる ・返骨や粉骨、分骨に対応可能 ・好きな場所で見送れる ・家族みんなで見送れる ・供花やおやつを供えてあげられる ・提携霊園への埋葬の手配が可能 ・大型犬対応のところもある | ・火葬の日時を自由に決められる ・自分の手で拾骨ができる ・返骨や粉骨、分骨に対応可能 ・家族みんなで見送れる ・供花やおやつを供えてあげられる ・火葬から埋葬まで一貫して対応可能 ・大型犬、超大型犬対応のところもある |
デメリット | ・火葬する日時(遺体が回収される日時)を自由に決められない ・火葬に立ち会えないところが多い ・遺骨の返骨ができないところが多い ・遺骨、遺灰は埋め立てられる ・ゴミと一緒に燃やされる自治体もある ・供花やおやつを棺に入れられない | ・高額になりがち | ・車などの移動手段がないと利用しにくい ・高額になりがち |
犬種別対応の可否 | 小型犬 〇 中型犬 〇 大型犬 ✕ 超大型犬 ✕ | 小型犬 〇 中型犬 〇 大型犬 〇 超大型犬 ✕ | 小型犬 〇 中型犬 〇 大型犬 〇 超大型犬 △(対応可能なところもある) |
●供養方法は手元供養、自宅での埋葬、ペット霊園への埋葬が一般的
ペットちゃんの遺骨は、手元供養、自宅での埋葬、ペット霊園への埋葬の3つが一般的です。
この他にも、散骨(許可を得た土地、海などへパウダー状にした遺骨を撒く)、樹木葬(樹木の下に埋葬し自然に還す)、宇宙葬(成層圏に散骨)、飼い主様のお墓に一緒に入る、などの方法もありますが、ここでは一般的な3つの方法を比較します。
手元供養 (祭壇へ祀る、遺骨アクセサリーなど) | 自宅での埋葬 (私有地、プランター) | ペット霊園への埋葬 (合同、個別) | |
メリット | ・ペットちゃんをいつもそばに感じられる ・毎日供養できる ・ペットロス軽減に役立つ(世話好きの飼い主様向け) ・後々、埋葬や散骨、分骨などを行う際にも対応できる | ・ペットちゃんをいつもそばに感じられる ・毎日供養できる ・ペットロス軽減に役立つ(世話好きの飼い主様向け) | ・永代供養、年忌法要など、人と同じような丁寧な供養ができる ・管理を霊園に任せられる ・自宅で供養する際に起こりがちなトラブルを避けられる ・ペットロス軽減に役立つ(人と同じように扱ってあげたい飼い主様向け) ・飼い主様が亡くなった後も供養を任せられる ・飼い主様と一緒に入れるお墓もある |
デメリット | ・周囲への配慮が必要(遺骨を手元におくことに抵抗感を持つ人もいる) ・遺骨を祀る場所の確保が必要 ・遺骨にカビが生えないように管理が必要 ・飼い主様が亡くなった後はどうするか決めておく必要がある | ・周囲への配慮が必要(お墓の位置によっては近隣住人で嫌がる人がいる可能性もある) ・気軽に引越しや不動産の売却ができなくなる ・長期的な管理が必要 ・飼い主様が亡くなった後はどうするか決めておく必要がある | ・郊外にあることが多く、場合によっては気軽にお墓参りに行きにくい ・費用がかかる |
愛犬が亡くなる前には食欲減退、睡眠増加などの兆候が

どの生き物にも言えるのですが、老化が進行し死を迎えるまでには身体機能の衰えが見られ、活動時間が短くなっていきます。
また、内臓機能も低下するため、食欲が減ってだんだん痩せていきます。
ここでは、犬が亡くなる直前に見られる症状を詳しく解説いたします。
犬が亡くなる前に見られる症状
犬が死を迎える前には、食欲減退や睡眠時間の増加、活動意欲の低下などが見られます。
徐々に寝ている時間が長くなっていき、食もどんどん細くなり筋肉が痩せ、目が開いていてもぼーっととしていることが増えます。
亡くなる直前には、呼吸の減少・増大・無呼吸を繰り返すチェーンストーク呼吸が見られることもあります。
また、お別れの挨拶をするかのように、普段甘えない子が甘える仕草をしたり、飼い主様に呼びかけるように鳴いたりして息を引き取ったという話しも多いです。
筆者の5匹目の愛犬は、間質性肺炎を患い、治療の甲斐もむなしく1カ月ほどの間にどんどん弱っていき、亡くなる数日前からは寝たきりのような状態になりました。
しかし最期の瞬間には、よろよろと自分の力で立ち上がり、母や私にすり寄って鼻を鳴らしてくれました。
その後、私たちに抱きしめられながら天国へと旅立っていったのです。
どこにそんな力が残っていたのかと驚くと同時に、一緒に過ごした日々への感謝の気持ちを伝えてくれたようで涙が止まらなかったのを覚えています。
老衰・病気別の症状と亡くなる前の兆候
基本的に、犬が亡くなる直前には病気の有無にかかわらず「食欲減退」「睡眠時間の増加」「活動意欲の低下」が見られますが、病気の種類によっては容体が急変し、突然死を迎えてしまうこともあります。
ここでは、老衰と比較して、代表的な疾患ごとの症状と亡くなる前の兆候について一覧表にまとめてご紹介します。
老衰 | 腎不全 | リンパ腫 | 癌(がん) | 肺水腫 | |
特徴 | ・加齢に伴う衰え | ・腎臓の機能低下により、老廃物が体内に溜まって全身に障害をもたらす病気 ・早ければ7~8歳ころから発症 ・完治することは難しいが、早期発見して対処療法、食事療法、緩和ケアなどで上手に付き合っていけば長生きできる子も多い 【症状】 多飲・多尿、食欲低下、体重減少、嘔吐、貧血 | ・血液の癌の一種 【末期症状】 多中心型(犬のリンパ腫で一番多い。約8割):呼吸困難、食欲不振、発熱、嘔吐、下痢、体重減少 消火器型:嘔吐、下痢、粘血便、全身の状態悪化 縦隔型:腫瘍の圧迫や胸水貯留の悪化による呼吸困難、浮腫 皮膚型:脱毛、フケ、赤み、潰瘍化して出血 | ・強い痛み、倦怠感、痙攣、呼吸困難など、癌の種類によって症状は様々 【末期症状】 痛み、吐き気から食欲不振になり体重が減少 | ・肺に水が溜まる病気 ・心臓病を持つ犬で起こることが多い 【症状】 呼吸が荒い、咳、抹消の冷え、貧血、血や泡を吐く |
亡くなる前の兆候 | ・徐々に寝ている時間が長くなり、じっとしていることが増える ・食欲がだんだんと衰えていく ・トイレの失敗が増える ・焦点が合わずぼーっとする ・チェーンストーク呼吸が見られることがある | ・だんだん動くことが減り、眠ったままのように亡くなることが多い(老衰と似た最期の迎え方) | ・型ごとの症状が悪化 ・容体が急変し死亡することもある | ・各癌の症状が悪化 ・容体が急変し死亡することもある | ・呼吸困難に陥り突然死することもある |
どんな病気にも言えることですが、早期発見、早期治療で生存率は高まります。
異変に少しでも早く気付けるように、愛犬の定期検診は6歳までは1年に1回、6歳を超えたら半年に1回を目安に受診しましょう。
また、仮に発見が遅れても適切な治療ができれば、完治はできなくても、症状の改善や緩和ができて、ペットちゃんが過ごしやすくなります。
万が一、病気がわかった時には、獣医師や家族とよく相談してペットちゃんに合った治療方針を決めてください。
・治療にかかる期間、費用、通院の頻度などを確認し、現実的に対応できる中で最良の方法を選択する
・病状の改善には個体差が見られ、中には薬が効かなくなってくる犬もいる
・飼育環境の見直しやエサの見直しを行う
・看取りや供養について考えておく
最期の時はできるだけそばにいて安心させてあげよう

愛犬の死期が近づいていると感じたら、何よりも大切なのは「そばにいてあげること」です。
できる限り一緒に過ごす時間を作り、穏やかな気持ちで寄り添ってあげてください。
声をかけることもとても大事です。
「ありがとう」「大丈夫だよ」「大好きだよ」といった優しい言葉を何度でも伝え、そっと優しくなでてあげましょう。
大好きな飼い主様がそばにいることで、ペットちゃんも安心し、穏やかな表情を見せてくれることでしょう。
そのような時間をしっかりと持つことで、飼い主様自身もお別れの後に感じる後悔が少なくなり、心の整理にもつながります。
今こそ、あふれる愛情と感謝を精一杯伝えてください。
それが、ペットちゃんへの何よりの贈り物になるはずです。
愛犬が亡くなったら速やかに安置して火葬を手配

愛するペットちゃんを看取った後は、悲しみから何もする気が起きないかもしれません。
しかし、ペットちゃんをきれいな姿で旅立たせてあげるために、飼い主様の手で遺体の処置(エンゼルケア)と安置をしてあげましょう。
適切な方法で安置すれば夏場で1~2日、冬場なら2~3日ほどきれいな姿を保つことができます。
愛犬の遺体の処置(エンゼルケア)と安置方法
愛犬の遺体は死後1~2時間ほどで死後硬直が始まります。
硬直状態になると、ペットちゃんの体勢を変えたり、目や口を閉じたりすることが難しくなるため、死亡が確認されたらできるだけ速やかに遺体の処置(エンゼルケア)と安置を行いましょう。
●遺体の処置(エンゼルケア)
ペットちゃんの遺体の処置(エンゼルケア)には、「感染症予防」「遺体のケア」「飼い主様の心のケア」という3つの目的があります。
まずは、ペットシーツやバスタオルを敷いたところにペットちゃんを寝かせて、手足を優しく曲げて体に寄せるように体勢を整えます。
目や口が開いていたらそっと閉じてあげましょう。
次に、かたく絞ったタオルやウェットティッシュなどで全身を拭いて汚れを落とし、ブラシで毛並みをきれいに整えてあげてください。
体液や排泄物が遺体から漏れてしまうことがありますので、鼻や肛門、耳にはコットンやティッシュを詰めましょう。
・手足が伸びたままだと棺に入らないことがあるので要注意
・目が閉じ切らない場合は、無理に閉じようとせずハンカチなどを掛けてあげる
・口はタオルやリボンで閉じた状態で固定しておけば、硬直後に外しても開かなくなる
・遺体が濡れていると腐敗しやすくなるので、濡れタオルで拭いた後に水分が気になるときは、乾いたタオルで再度拭いてあげる
●安置方法
遺体はそのままでは腐敗が進んでしまうので、火葬までの間きれいな姿を保てるように冷やして安置します。
まず、棺(段ボール箱やペット用棺など)の中にペットシーツやバスタオルなどを敷き、ペットちゃんを寝かせます。
次に、ドライアイスや保冷剤をタオルなどで包み、ペットちゃんの周りに置いて遺体を冷やします。
棺は冷暗所に安置し、室温を20度以下に調整しましょう。
・保冷剤は解け切る前にこまめに取り替える
・凍傷になるので、ドライアイスには素手で触れない
・ドライアイスを使用する場合、棺は密閉せず部屋を換気する
・遺体に直射日光や空調の風が当たらないようにする
愛犬の火葬をしてもらう業者に連絡する
適切な方法で遺体の処置と安置をすれば夏場で1~2日、冬場で2~3日ほどはきれいな姿を保てます。
しかし、それでも少しずつ腐敗は進んでしまうので、安置ができたらできるだけ早く火葬の手配をしましょう。
ペットちゃんの生前から、火葬を依頼するところを決めていたのであればそこへ連絡を入れてください。
決まっていない場合は、希望に合った火葬ができる業者を探して見積もりを依頼し、十分に検討して任せるかどうかを決めましょう。
悪質な業者に騙されないためにも、できれば複数社で相見積もりするのが望ましいです。
悪質な業者に依頼してしまうと、大切なペットちゃんの遺体を不法投棄されたり、別のペットの遺骨が返却されたりすることもあります
「安いから」というだけで選ぶのではなく、複数社で比較したり、口コミを見たりして信頼できる業者を見つけてください
筆者の場合、見送ってきた愛犬たちはみんな同じお墓に入ってもらっていますので、5匹目の愛犬の火葬の手配もスムーズにできました。
悲しみから心に余裕がない状態でも、火葬や供養を任せられるところがすでに決まっていると、不安や焦りを感じることなく過ごせます。
愛犬が好きだったおやつや玩具をお供えして手を合わせたりと、十分にお別れの時間を取れたのも良かったと思います。
当記事をご覧の方で、これから愛犬の看取りを迎えるという飼い主様には、ペット葬儀の生前相談をしておくことを個人的には強くおすすめいたします。
死亡届を提出する
飼い犬が亡くなった場合は、飼育届を提出した自治体の役所や保健所に「死亡届」を出す必要があります。
死亡した日から30日以内に提出する義務があり、怠ると20万円以下の罰金刑が科される場合があるので注意しましょう。
死亡届は役所の窓口でもらえる他、ホームページからダウンロードできる自治体もあります。
・犬鑑札
・狂犬病予防注射票
・死亡届の用紙
・飼い主の氏名、住所、電話番号など
・犬の生年月日、犬種、名前、性別など
・犬の死亡年月日
・犬の登録年度と登録番号
また、死亡届の他にも、マイクロチップを装着している場合は登録解除の手続きを、ペット保険に加入している場合は解約手続きを、血統書団体に加盟している場合は登録抹消手続きを行いましょう。
まとめ
愛犬とのお別れを後悔のないものにするために、今一緒にいられるこの時間を、心から大切にしてください。
「ずっと一緒にいたい」と願っても、多くの場合、愛犬は飼い主様よりも先に天国へと旅立ってしまいます。
だからこそ、愛犬がシニア期を迎えた頃から、終末期の過ごし方や看取りの準備、供養について考え始めることが大切です。
すでにその時が近づいていると感じている方は、できるだけ愛犬のそばにいてあげてください。
そして、心構えをするためにも、供養方法や安置の仕方などを事前に確認しておきましょう。
当たり前のように感じていた愛犬との日々に、改めて感謝の気持ちを持って向き合い、愛犬が穏やかに、そしてあなたの愛に包まれながら旅立てるように、「幸せな終末期」を一緒に過ごす準備をしてあげてください。
看取り方や供養のあり方を、今、しっかりと考えておくことが、愛犬への最期のプレゼントになるはずです。