
かけがえのない思い出をともにした愛猫が死んでしまったら、何も手につかず呆然としてしまうのは当然です。
しかし、大切なペットちゃんをきちんと見送ってあげるために飼い主様がやってあげるべきことはいくつかあります。
それは、以下の3つです。
①遺体のエンゼルケア……汚れを落とし毛並みを整え、生前のようなきれいな姿に整えてあげる処置
②遺体の冷却と安置……お見送りまでの間、ペットちゃんの遺体が傷まないように冷やしてあげて冷暗所に安置
③猫ちゃんの供養の準備……飼い主様の要望に合わせた供養ができるように手配
当ページでは、猫ちゃんの遺体のエンゼルケアや安置方法、供養方法に加えて、死亡確認の仕方やペットロスへの向き合い方などをわかりやすくご紹介しています。
愛する猫ちゃんの旅立ちを、あたたかで悔いのないものにしたいとお考えの飼い主様は、ぜひ最後までご一読ください。
この記事の監修者

高間 健太郎
(獣医師)
大阪府立大学農学部獣医学科を卒業後、動物病院に勤務。診察の際は「自分が飼っている動物ならどうするか」を基準に、飼い主と動物の気持ちに寄り添って判断するのがモットー。経験と知識に基づいた情報を発信し、ペットに関するお困り事の解消を目指します。
まずは猫ちゃんの生死確認を行う|慌てず心を落ち着けて臨もう

まずはじめに猫ちゃんの様子を確認しましょう。
亡くなっているかどうかは、呼吸が完全に停止しているか、脈が取れないか、瞳孔が開いたままになっているかで確認できます。
いつもと違う猫ちゃんの様子に、動揺して慌ててしまう飼い主様の気持ちはよくわかりますが、一旦落ち着いて、できるだけ冷静に確認を行いましょう。
猫ちゃんの呼吸や心拍が確認できた場合、すぐに対処できれば命を救えるかもしれません。
直ちに動物病院へ連れて行ってあげましょう。
呼吸や脈拍が確認できない、すでに死後硬直*が始まっているなど、残念ながら死亡していることが判明したら、とてもつらく悲しいことですが、きれいな姿で天国へ送り出してあげるためにも準備を始めましょう。

死後、時間の経過とともに遺体が詰めたくかたくなる現象。猫の場合、死後2時間ほどから硬直が始まり、24時間ほど続く。
猫ちゃんの死亡が確認されたら遺体のエンゼルケアと安置をする

猫ちゃんが亡くなったらできるだけ早く遺体のエンゼルケアと安置を行いましょう。
死後硬直は想像以上のスピードで進行(死後2時間ほどから始まり24時間ほど続く)し、手足が伸びたまま硬直すると棺に収まらなくなってしまう可能性があります。
以下の手順で遺体のエンゼルケアと安置を行い、猫ちゃんを眠っているときのような安らかな姿勢で休ませてあげましょう。
手足を優しく折り曲げて、眠っているような体勢にする
猫ちゃんが亡くなったらすぐに、手足の関節を体側にやさしく折り曲げてあげましょう。
丸まって寝ているときに近い姿になれば問題ありません。
また、目や口が開いていたら、閉じてあげてくだい。
手のひらで撫でるようにすれば目を閉じることができますが、閉じ切らない場合は、ガーゼやハンカチを顔に掛けてあげましょう。

すでに死後硬直が始まっている場合は、無理に体勢を変えようとはせず、24時間ほど経って硬直が解けてから体勢を整える
猫ちゃんの体を清潔にする
猫ちゃんの体をきれいにしてあげるエンゼルケアを行います。
まずは、お湯で湿らせたガーゼやタオルなどで全身をやさしく拭いて汚れを落としてあげましょう。

肛門や口からは体液や汚物が出てきてしまうことがあります。
そのようなときは、きれいに拭き取り、これ以上出てこないように鼻や肛門に綿球やコットンを詰めてあげてください。

次に、愛用のブラシで全身の毛並みをきれいに整えてあげましょう。

ここまでがエンゼルケアの手順です。
エンゼルケアは、感染症予防という衛生的な目的だけでなく、猫ちゃんの尊厳と飼い主様の心を守るための処置でもあります。
猫ちゃんのために愛情を込めて、丁寧に最期のお手入れをしてあげてください。
続いて、お見送りまでに遺体をきれいな状態で保つための冷却・安置を行っていきます。
棺を準備して猫ちゃんの遺体を中に納める
体を清潔にしたあとは、猫ちゃんを棺に納めます。
棺はダンボール箱や猫ちゃんが生前お気に入りだったケージなど、ゆとりを持って納まるものであれば問題ありません。
まずは底面にペットシーツや新聞紙を隙間なく敷き詰め、その上にバスタオルなどを敷き、その上に猫ちゃんを寝かせてあげましょう。

猫ちゃんの遺体をしっかりと冷やす
猫ちゃんの遺体を棺に納めたら、腐敗が進行しないようにしっかりと冷やしてあげましょう。
冷却には保冷剤やドライアイスを使います。
タオルやガーゼで包み、猫ちゃんの周囲に添えて全身を冷却します。
腐敗が進みやすい頭部と腹部は、とくに念入りに冷やしてください。

棺を安置する場所は、猫ちゃんが安らかに眠れるように静かな部屋を選び、20度以下を保ってください。
夏場ならエアコンの効いた涼しい部屋で1~2日、冬場なら暖房がついていない部屋で2~3日ほどの間、安置することができます。
棺には、お供えとしてお花や猫ちゃんが好きなおやつ、おもちゃなどを入れてあげるのもおすすめです。

・遺体が傷む可能性があるので、保冷剤やドライアイスはそのまま添えず、必ずタオルやガーゼで包む
・ドライアイスを使用する際は、素手で触らない(凍傷の危険性がある)
・ドライアイスを使用する場合は、棺を密閉せず、安置する部屋を換気する
・直射日光やエアコンの風が遺体に直接当たらないようにする
猫ちゃんの遺体の安置方法については、YouTubeの動画でも詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
猫ちゃんの安置ができたら供養の準備をする

遺体の安置が完了したら、猫ちゃんの供養の準備を進めましょう。
生前から供養方法を決めていた飼い主様は、ペット火葬業者へ連絡を入れてお見送りの日時を相談してください。
まだ決まっていない飼い主様は「私有地への埋葬(土葬)」「訪問ペット火葬業者・ペット霊園での火葬」「自治体での引き取り」の3つの中から、要望にあった供養方法を選択します。
以下に各供養方法の特徴と、どんな飼い主様におすすめなのかを解説いたします。
私有地への埋葬(土葬)
土葬は文字通り「遺体を土の中に葬ること」です。
飼い主様ご自身の私有地もしくは、埋葬許可が正式に取れた土地でのみ行えます。
どれだけ大切な家族でも、猫ちゃんの遺体は一般廃棄物扱いとなります。
そのため、他人の私有地や公共の場所に猫ちゃんの遺体をを無断で埋葬すると、不法投棄となり罰せられてしまいます。
この方法は、猫ちゃんを身近に感じられる点や、毎日のお世話をするようにお墓のお手入れをすることで心が癒される点が魅力です。
しかし一方で、悪臭や虫が発生しないように、また野生動物に掘り起こされないように、常に管理する必要があり、少なくとも土に還るまでの十数年間は引越しや土地の売却などが容易にできなくなる点も考慮しなくてはいけません。
訪問ペット火葬業者・ペット霊園での火葬
猫ちゃんの遺体を火葬する場合、訪問ペット火葬業者かペット霊園に依頼する飼い主様がほとんどで、近年では最も選ばれている方法です。
火葬は、「合同火葬」「一任個別火葬」「立会個別火葬」の3種類があり、「自分の手で拾骨したい」「他のお友達と一緒に天国へ行かせてあげたい」など、飼い主様の希望にあわせて選ぶことができます。
●合同火葬
他の飼い主様のペットちゃんと一緒に火葬してもらう方法です。
遺骨が混ざってしまうため返骨はできません。
火葬後の遺骨は、ペット霊園の合同墓地に埋葬されるのが一般的です。
立ち会いや返骨ができない代わりに、費用相場はこの後にご紹介する「一任個別火葬」や「立会個別火葬」よりも安い16,000円~20,000円程度です。
「費用を抑えて葬儀がしたい」「寂しくないように、お友達と一緒に天国へ旅立たせてあげたい」という飼い主様向けです。
●一任個別火葬
ペットちゃんだけを個別で火葬してもらう方法です。
火葬をスタッフに一任するため、お骨上げや立ち会いはできませんが、あらかじめ希望しておけば遺骨は返骨してもらえます。
費用は猫ちゃんの場合、21,000円~24,000円が相場です。
「愛猫だけで弔ってあげたい」「遺骨になった姿を目にするのが辛い」という飼い主様向けです。
●立会個別火葬
ペットちゃんだけを個別で火葬してもらう方法で、一任個別火葬とは異なり、飼い主様が火葬に立ち会い、お骨上げも自らの手で行うことができます。
飼い主様が終始寄り添い、手厚い供養ができるのが、立会個別火葬の最大の魅力です。
訪問ペット火葬業者ならではの特徴としては、思い出の場所や自宅前など、お見送りの場所まで自由に選ぶことができ、家族、親族以外にもペット仲間にも列席してもらえます。
ペット霊園ならではの特徴としては、火葬から納骨・埋葬までを一貫して行うことができます。
猫ちゃんの場合、費用は23,000円~25,000円程度が相場となります。
「自分の手で拾骨してあげたい」「外出が難しい家族も揃ってお見送りしたい」「ペットちゃんらしい葬儀をしてあげたい」という飼い主様向けです。
自治体の引き取り
自治体に猫ちゃんの遺体を引き取ってもらう方法です。
自治体によって対応が大きく異なるため、事前に問い合わせて詳しい取り扱い方法を確認することが重要です。
基本的に、火葬への立ち会いはできず、返骨にも対応していない自治体がほとんどです。
中には一般廃棄物として処理される場合もありますので、自分の意向に沿うかどうかを慎重に判断したうえで利用するかを決めましょう。
費用相場は千円前後から数千円ほどと自治体によって幅がありますが、訪問ペット火葬業者やペット霊園での火葬と比べると安価です。
猫ちゃんの遺骨の供養方法を選ぶ

火葬後に残った遺骨の供養方法にもはいくつかの選択肢がありますので、飼い主様の希望にあった方法を選択しましょう。
ペット霊園への納骨・埋葬
人と同じように、ペット霊園のお墓や納骨堂に納骨して供養する方法です。
費用は掛かりますが、飼い主様の代わりに遺骨を管理してもらえるため、保管状態を心配する必要がなく、カビや劣化のリスクも避けられます。
定期法要や供養祭が執り行われる霊園が多く、万が一飼い主様がお墓にお参りできなくなった場合でもペットちゃんの供養を続けることができます。
・霊園は郊外にあることが多く、頻繁にお墓参りには行くのが難しい場合がある
自宅(室内)での手元供養
自宅で猫ちゃんの遺骨を供養する方法です。
猫ちゃんの遺骨が入った骨壺を、リビングや寝室などの風通しが良い場所に安置します。
猫ちゃんとの思い出の写真や、よく遊んでいたおもちゃを飾り、簡易的な祭壇を作る飼い主様もおられます。
愛猫をいつでも身近に感じることができ、悲しみや寂しさをゆっくりと癒していくことができるのが魅力です。
・湿気により遺骨にカビが発生することがあるため、乾燥剤を使用する、珪藻土の骨壺を使用するなどして防ぐ
自然供養
自然供養とは遺骨を海や山などの自然に返す供養方法です。
猫ちゃんの遺骨を粉骨してから海や山へ散骨して、雄大な自然に還してあげるのです。
愛猫との思い出の場所へ散骨すればきっと喜んでくれるはずです。
ただし、散骨にはいくつか厳重なルールが存在するため注意が必要です。
例えば、遺骨は必ず粉末状にしなければならないことや、喪服を着ずに平服で行うことが推奨されているなど、通常の供養とは大きく違う部分があるため、必ず確認しておきましょう。
トラブルにならないか心配な場合は、きちんと許可を得て散骨を行っている専門業者に依頼するのが安心です。
他にも樹木を墓標として供養を行う樹木葬や遺骨を風船に乗せて成層圏に散骨する宇宙葬などもあります。
宇宙葬は専門業者に依頼するしか方法はありませんが、樹木葬は対応しているペット霊園が近くにない場合、自宅にある樹木の根元に遺骨を埋めることもできますし、庭がなくてもプランター(植木鉢)に埋めて、そこに植物の苗を植えることもできます。
・行う際にはルールを確認する必要がある
・対応しているペット霊園やペット火葬業者が限られる
猫ちゃんのお見送りが済んだらペットロスと向き合う

大切な愛猫を亡くした悲しみは計り知れないものです。
「いつまでも悲しんでいてはペットも悲しむ」と気持ちを無理やり切り替えようとしても、かえって悲しみを増幅させるだけかもしれません。
ご自身のお気持ちを抑える必要はありません。
ずっとこらえるくらいなら、思い切り泣いて発散したり、誰かに気持ちを打ち明けてみましょう。
筆者も愛猫との別れを経験しており、旅立ちの後には、ベッドに残る愛猫の香りを感じたときや、予想外の場所に落ちている愛猫の髭を見つけるたびにどうしようもなく寂しくなり何度も涙を流しました。
それでも、愛猫との思い出を家族で語り合ったり、写真に話しかけたりすることで徐々に心も癒されていきました。
今では、不意に愛猫の髭を見つけても「会いに来てくれたんだ」と、あたたかく感じられるくらい元気になっています。
筆者のように、別れの悲しみや猫ちゃんとの思い出を人と分かち合うこともペットロスを乗り越えるには効果がありますし、遺骨を入れられるアクセサリーを身に付けたり、遺品の整理をすることも効果的な方法だと言われています。
そしてなにより、猫ちゃんとの別れに後悔を残さないためにも、感謝の気持ちを込めてしっかりとお見送りし、供養することが大切です。
まとめ
愛猫が亡くなってしまったら心にぽっかり穴が開いたような気がして、悲しみが押し寄せてくるかもしれません。
それは決して悪いことではなく、猫ちゃんへの深い愛情の証です。
それだけ飼い主様に深く愛された猫ちゃんはきっと幸せですし、飼い主様とのかけがえのない思い出に包まれて旅立てるはずです。
だからこそ、飼い主様は気持ちを強く持ち、遺体のエンゼルケアや安置から、最期のお見送りまで、一つひとつ丁寧に行ってあげましょう。
ハピネスでは、心あたたまる葬儀で愛猫を見送ってあげたいという飼い主様のご相談を承ります。
愛猫を亡くした直後で、悲しみから「誰かに話しをきいてもらいたい」という方も、遠慮なくご連絡くださいませ。