
ペット火葬業者を選ぶ際、どのような基準で業者を選べばいいのか分からないという方がほとんどだと思います。
優良なペット火葬業者を選ぶ際に注目すべきポイントは「料金」や「サービス内容」「口コミ評判」などいくつかありますが、「専門資格の有無」も重要な判断材料の一つです。
ペットの葬儀・火葬には、法律で定められた資格はないので、サービス提供を行ううえで必ずしも資格が必要となるわけではありません。
しかし、ペット関連の法令や火葬炉の扱い方、葬祭におけるしきたりやマナーなど、サービスを提供するうえで知っておくべき知識や技術はたくさんあります。
これらについて学び、その知識や技術を会得したことを証明する民間資格として有名なのが「動物葬祭ディレクター」です。
当コラムでは、動物葬祭ディレクター資格の創設理由、資格の特徴、どのような知識や技術が得られるかを解説し、また同様にペット葬儀・火葬に関連する他の資格も2つご紹介します。
加えてペット火葬でよくあるトラブルや優良業者の選び方を後半でお伝えしますので、大切なペットちゃんとのお別れで後悔したくない飼い主様は、ぜひ最後までご覧ください。

この記事の監修者
高間 健太郎(獣医師)
大阪府立大学農学部獣医学科を卒業後、動物病院に勤務。診察の際は「自分が飼っている動物ならどうするか」を基準に、飼い主と動物の気持ちに寄り添って判断するのがモットー。経験と知識に基づいた情報を発信し、ペットに関するお困り事の解消を目指します。
動物葬祭ディレクターとは?創設理由とその特徴

この章では、「動物ディレクター」がどのような理由で作られたのか、またその特徴を解説します。
動物葬祭ディレクター
動物葬祭業界の資質の向上に寄与する為の事業を行うことにより、動物葬祭事業者を利用する一般動物愛護者の消費者利益を擁護し増進させ、元飼い主の信条に添った方法で適法かつ衛生的にペット死体が扱われる様になる為の公衆衛生向上の為の啓蒙活動を行うことを目的とする
●資格が作られた背景
動物葬祭ディレクター資格は、日本動物葬儀霊園協会によって運営されており、ペット火葬業界の品質向上や信頼を回復させることを目的として創設されました。
これには、ペット葬儀を執り行う業者が増加する中で、ずさんな対応をする火葬業者によるトラブルが多発していたことが背景にあります。
●資格の特徴
動物葬祭ディレクターは、ペット火葬や葬儀に関する知識はもちろん、動物に関する法律や宗教、ペットロスなどについて幅広く学びます。
動物葬祭ディレクターには1級と2級があり、2級は誰でも受けることができますが、1級は実務経験が3年以上、または2級を取得していることが必須となります。
*参考サイト
一般社団法人 日本動物葬儀霊園協会
動物葬祭ディレクター資格取得に必要なペット葬儀・火葬に関する知識

この章では、動物葬祭ディレクター資格を取得するためにはどのような知識が必要で、実務にどのように役立てられるのかをご紹介します。
動物葬祭の知識
動物葬祭の歴史から葬儀・火葬・土葬・供養の手順や注意点など、動物の葬祭に関する知識を学びます。
動物の葬祭には明確なしきたりが存在しないため、人の葬祭に倣って執り行われることが一般的です。
そのため、人の葬儀の種類やしきたりなども学び、葬儀全体の知識を身につけます。
火葬の知識
火葬設備の安全かつ適切な使用方法や、拾骨の意味などセレモニーに関する実践的な知識を学びます。
火葬炉の基本的な操作方法や遺骨をきれいに残すための状況に応じた判断方法、手入れの仕方などを知り、安全に火葬するための知識と技術を得ます。
動物葬儀霊園管理
動物霊園施設の意義、墓地・納骨堂の種類と特徴、運営や管理を行ううえでの注意点や心構え、従業員の意識と能力向上を行うための知識などを学びます。
ペットロス
愛するペットちゃんとの別れによってペットロスを発症する飼い主様は少なくありません。
具体的にどのような症状が出るのか、ペットロスを重くする要因や乗り越え方などペットロスに関する知識を学びます。
つらい思いをされている飼い主様へ、適切な心遣いができるよう努め、ペットロスからの回復をサポートする意味合いもあります。
喪主対応及び業務道徳
喪主である飼い主様への心遣いや礼儀、業務を行うにあたっての規範や法律などを学びます。
悲しみに暮れる飼い主様に寄り添い、悔いのないお別れをしていただくために非常に重要な項目です。
衛生管理
遺体の取り扱い方や動物の感染症などについて学びます。
動物の遺体から人に移ってしまう病気もあるので、飼い主様や他のペットちゃんを守る知識として知っておく必要があります。
動物愛護法及び愛玩動物
動物の寿命や特徴に加え、ペットに関する法律についても学びます。
飼い主様に安心してご利用いただくために、また誰かに迷惑を掛けることがないように、法律に違反することは絶対にあってはなりません。
知らずに違反してしまうことがないよう、事業を始める前にしっかり確認しておくべき項目です。
宗教
仏教やキリスト教など様々な宗教について学びます。
宗教によって死生観が異なり、例えば仏教においては正しい振る舞いでもキリスト教では失礼になってしまうこともあります。
信仰される宗教は飼い主様によっても違うため、様々な宗教の考えを知っておくことが大切です。
動物葬祭ディレクター以外にも民間資格は2つある

実は、「動物葬祭ディレクター」以外にも、ペット葬儀・火葬に関する民間資格は存在しています。
それが「ペット葬儀士」と「ペット火葬管理士」です。
この章では、これら2種類の資格について、創設理由やその特徴をご紹介します。
ペット葬儀士
よりご遺族の気持ちに寄り添うために、専門知識を持った信頼できるペット火葬業者を増やし、また資格取得者同士が交流し学び合う場を提供することでペット葬儀業界全体の発展を目指す
引用・要約済:ペット葬儀協会ハピネス
●資格が作られた背景
犬や猫だけでなく様々な動物を家族として迎え、「最後のときも人と同じように見送ってあげたい」という方が増える中、自治体ではいまだにペットの遺体が一般廃棄物として扱われ、また悪徳業者の横行によりご遺族を悲しませるトラブルも相次いでいることを受け、これらの問題を解決するため、そしてより遺族に寄り添える人材の育成とペット葬儀業界全体の品質向上を目的としてペット葬儀協会ハピネスによって運営される資格です。
●資格の特徴
ペット葬儀士は、ペットの火葬・葬儀に関する専門知識と技術、衛生、法令、宗教、ペットロスなどについて学びます。
また、資格を取得した者の中で、協会の定める基準を満たした会員は「優良事業者」として認定されます。
筆者は、こちらの「ペット葬儀士」資格を取得しています。
ペットの葬儀や火葬についての知識や技術はもちろんですが、動物感染症やその防止対策、関連する法律や条例は、飼い主様や他のペットちゃんを守るためにもとても重要だと思いました。
独学ではなかなか網羅できないであろう内容のため、個人的にはペット火葬・葬儀を行う全業者に専門資格を取得してもらいたいと感じています。
ペット火葬管理士
「最愛のペットを亡くした最も不安定な精神状態の飼い主様に、最高のお別れを演出すること」を責務とし、非常に高度な接客や知識が必要不可欠なペットのお別れ業務に対して、幅広く知識の習得を行うとともに「飼い主様のメリット」と「会員のメリット」を最大限考え、地域に根ざしたペットのお別れを行う
引用・要約済:ペット火葬協会
●資格の特徴
高度な接客を行うために必要な知識や安全対策を体系的に学びます。
合格後も協会の定める指定講習の受講が必須で、さらに「優良事業者認定」を受けるには営業拠点に「ペット火葬管理士」を1名以上選任して、公正取引、安全確保などを管理・監督することが義務となります。
*参考サイト
ペット火葬協会
ペット火葬・葬儀で実際にあったトラブル5例

ペット火葬・葬儀に関するトラブルとは、具体的にどのようなものが挙げられるのでしょうか。
この章では実際にあったペット火葬・葬儀のトラブルについてご紹介します。
請求金額のトラブル
「最初に言っていた料金より大幅に上回った金額を請求された」「オプションを勝手につけられた」など料金の支払いに関するトラブルが多数報告されています。
見積もり後に追加料金が発生するかどうかしっかりと確認してから、契約するようにしましょう。
火葬方法のトラブル
「個別での火葬を依頼したのに、他のペットちゃんと一緒に火葬された」というような、希望と異なる方法で火葬されるというトラブルも発生しています。
火葬に立ち会わず、業者に一任する場合は注意が必要です。
遺骨返却のトラブル
「遺骨の返却がない」「違うペットの遺骨が返却される」など、遺骨を巡るトラブルも発生しています。
単純な業者のミスというケースもありますが、火葬費用の節約と自分たちの手間を省くために意図的に行われている悪質なケースもあります。
遺体の不法投棄トラブル
ペットちゃんの火葬を依頼していたが、火葬されずにそのまま山などに遺体のまま放置されていたというトラブルもありました。
この場合は不法投棄として、行った業者だけではなく依頼した側も罪に問われる可能性があります。
強引な営業によるトラブル
「高額なグッズや必要のないオプションを強引に売りつけられた」「数社で相見積もりする予定だったが無理やり契約させられた」といった押し売りを行う業者もいます。
火葬・葬儀前なら契約書面を受け取った日から8日以内にクーリングオフを行い解約しましょう。
解約に応じない、またはすでに火葬・葬儀が行われた後なら、消費者センター(「188」番に電話)*1や警察(「#9110」番に電話)*2に相談してください。
資格以外も大切!安心して任せられる優良なペット火葬業者の選び方

大切なペットちゃんを見送るのですから、信頼できる業者にお願いしたいですよね。
これまで紹介してきた動物葬祭ディレクターのような専門資格の有無も大切ですが、持っているから安心とも言い切れません。
資格を持っていることは、一定以上の知識や技術を持つことの証明にはなりますが、それと対応の良し悪しはまた別だからです。
この章では、安心して任せられるペット火葬業者の選び方について詳しくご紹介します。
後悔のないお別れができるように、業者は慎重に選びましょう。
ホームページを閲覧し会社情報を確認する
チラシを見て業者を知ることもあると思いますが、依頼する前はホームページなどに「所在地」「連絡先」などの会社概要がきちんと掲載されているか確認しましょう。
悪徳な業者は、トラブル発覚後にすぐ逃げられるよう連絡先がわからないようにしていることも多いです。
電話で連絡し、対応や質疑応答を確認する
万が一、後からトラブルになった場合を想定し、申し込みは電話で行って、きちんと繋がることを確認しておくと良いでしょう。
また、実際に話してみてスタッフさんの対応の良し悪しを見る狙いもあります。
火葬・葬儀に関しての疑問や不安なことなどは遠慮なく質問し、誠実に応えてくれるかも確認すべきポイントです。
利用者の口コミ・評判を確認する
実際に利用した人の声、とくに同じ種類のペットちゃんの葬儀・火葬で利用した人の感想は非常に参考になります。
Google口コミの他、口コミサイトでも評価をみることができるので、いくつか確認してみましょう。
また、ペット火葬業者のホームページ上に葬儀・火葬の事例が載っていることもありますので、利用者の感想を読んだり、実際に掛かった費用や所要時間の参考にすると良いでしょう。
数社ほど比較、できれば相見積もりをする
初めてペット火葬を利用する際は、料金の相場などがわからないことがほとんどです。
できれば数社に見積もりを出してもらって納得するところで依頼するようにしましょう。
複数社で比較することで、自分と相性の良い業者やより要望通りの葬儀ができる業者を見つけられる可能性も高くなります。
まとめ
「動物葬祭ディレクター」はもちろん「ペット葬儀士」「ペット火葬管理士」など、ご紹介したどの資格も、ペットちゃんや火葬・葬儀に関する幅広い知識や技術を体得することが求められます。
愛するペットちゃんとのお別れの場を任せるには、これらの専門資格を持っていることは安心材料として大きな要素です。
しかし、それだけで選んでしまうのは少し危険だと言えます。
後悔なくペットちゃんを見送るためには、資格の有無に加え、信頼できる会社が運営しているのか、評判はどうか、料金は適正か、など多面的な視点で判断しなくてはいけません。
そして何よりも重要なのは、「ペットちゃんのことを大切にしてくれる」「飼い主様に寄り添ってくれる」ということだと思います。
ペットちゃんのお見送りで悔いを残すことがないよう、当記事を参考に、納得して任せられるペット火葬業者を見つけてくださいね。
この記事の執筆者

ペット火葬
ハピネス 編集部 J・N
愛するペットちゃんとのお別れによって心に深い悲しみと不安を抱えた飼い主様を支えられるような、わかりやすく正確な記事作成を心掛けています。自分のこと以上に大切な家族を思いやることができる優しい心を持った飼い主様の力になれるように努めます。